No2.ムガル(MOGUL)
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デザイナーMichael Schacht(ミヒャエル・シャハト)
メーカーgamefield(ゲームフィールド、日本)
発売年2013年 (原版2002年、ドイツ)
版元gamefield(ゲームフィールド、日本)
プレイ人数3~6人
公称プレイ時間約45分
対象年齢10歳以上
定価3550円(すごろくやで3195円で購入)
言語依存とても少ない(カードの会社名のみ)
相互干渉多い(競り、妨害など)
ルール難度少し簡単(基本は株の購入と売却だけ)
個人的評価7点(10点満点)
 2回目のレビューは『ムガル』です。シャハトの個人メーカーであるシュピーレ アオス ティンブクトゥ(Spiele aus Timbuktu)から2002年に発売されたゲームで、流通量が少なく高騰していたそうですが、熊本のゲームフィールドさんが日本語版を作成してくれたお陰で比較的安価に入手することが出来るようになりました。ネットでの評判も良く、競りゲームの最高峰との声もあったので、いつか入手したいと思っていたところ、先日のすごろくやセールに名前があったので遂に買ってしまいました。

1.ルール概要
 『ムガル』は株取引を行って勝利点を稼ぐゲームです。暗黒の木曜日カードを引くとゲームが終了し株券が紙切れになってしまうので、その前に購入した株を売り切ることを目指します。ここではまず株取引の中心をなす競りと株の購入・売却、そして株の配当について説明していきたいと思います。
 a)競り
 『ムガル』では毎ターン山札を1枚引き、その引かれた株券に対する競りを行います。この競りに勝つとその株を購入するか自分が持っている株を売却するか選んで行動することが出来ます。つまり、競りは株そのものではなく行動する権利を競っているということです。競り勝ったプレイヤーはどちらか好きな権利を手に入れることが出来るのですが、2番目まで競っていたプレイヤーは競り勝ったプレイヤーが選ばなかった権利を手に入れることが出来ます(競り勝った人がその株を購入すれば所持株の売却が、反対に売却をしていればその株の購入が出来るということです)。
 競りの流れですが、山札から引かれた株券に対し各人がチップを1つずつ出し、以後出す人がいなくなるまでチップを順番に出していきます。最後までチップを出し続けた人、つまりその株券に最高値をつけた人が行動の権利を手に入れることが出来ます。
 競りの中で各プレイヤーが出したチップは、途中で競りから降りた人が、その時点で場に出ていたチップを全て回収するということになっています(4人プレイの場合、誰も競りから降りずに一巡し、二巡目のスタートプレイヤーが降りたら、場に出ている4チップを回収して降りることが出来るということです)。
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(4人プレイで誰も降りずに二巡した場合、二巡目のスタートプレイヤーは場に出ている8チップを回収して降りることが出来ます。

 b)株の購入・売却
 行動の権利を競り勝ったプレイヤーは、株の購入か所持株の売却かのどちらかを選択して行動することが出来ます。株の購入を選択した場合は、競りにかけられていた株を所持株に加えることが出来ます。このとき追加でチップを拠出する必要はありません(ここでは売却に対する言葉として「購入」という言葉を使用していますが、実態としては株の「獲得」の権利を得るということです)。
 所持株の売却を選択した場合は、競りにかけられていた株の内枠の色と同じ色の所持株を売却することが出来ます(青い内枠の株に対し所持株の売却を選択すれば、手持ちの青い株を売却することが出来るということです)。
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(この株の場合、購入の権利を使えば白株が手に入り、売却の権利を使えば内枠の色が青のため手持ちの青株を売却することが出来ます。)

 売却する際の株券の価格ですが、これは売却しようとしている株と同じ種類の各プレイヤーが所持している株を合計した数がその価格になります。売却する枚数は1枚でも複数枚でも自由に決めることが出来、複数枚売却する場合には、その全てを同じ価格で売ることが出来ます。
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(4人のプレイヤーが合計で5枚の青株を所持しているため、青の株を1枚5点で売却することが出来ます。2枚売却すると合計で10点です。)

 売却したときに得られるのはチップではなく、ゲームに勝つために必要な勝利点です。『ムガル』で勝利点を獲得する方法は2つあり、今説明した所持株の売却と次に説明する株の配当になります。
 c)株の配当
 山札からカードが引かれた際に、その株と同じ株を所持していれば、1枚につき勝利点を1点獲得することが出来ます。同じ株を複数枚所持していればその数だけ勝利点が入ります。2枚所持していれば2点、3枚所持していれば3点獲得出来るということです。
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(この場合、左上と左下のプレイヤーがそれぞれ3点と2点を獲得出来ます。) 
 
 d)勝利条件
 山札から暗黒の木曜日カードが引かれたときにゲームが終了し、その時点で最も勝利点を稼いでいるプレイヤーが勝利します。所持チップは5つにつき1点に換算され、所持株は無価値になりますが、1位が同点の場合は所持株の多い方が勝利です。
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(暗黒の木曜日カードは山札の底5枚をシャッフルしたどこかに入っています。)

2.言語依存:とても少ない(カードの会社名のみ)

 株の会社名が英語で書かれていますが、読めなくてもゲームに影響はありません。株取引という雰囲気作りのために書かれているだけで、実際は会社名が書かれていない色だけのカードでもこのゲームは成立するからです。
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(株は5種類あり、全て実在した鉄道会社の社名になっています。)

3.相互干渉:多い(競り、妨害など)

 競りゲームであるため相互干渉は避けて通れません。株を獲得出来るかは相手がチップをどれだけ出してくるかに左右されます。チップを獲得するためには競りに参加して途中で降りることが必要ですが、自分の前に誰かが降りてしまえば場のチップはリセットされてしまいます。他のプレイヤーに購入・売却されるとまずい株が引かれたのにチップが足りないというときには、勝利点2と引き換えにチップ2枚を借金し決死の妨害をすることも可能です。自身が持っていない株でも、相手に売却の権利を行使させないためにわざと売却を宣言することも出来ます。
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(チップの総数は45枚であり、プレイ人数により初期配布のあとの残数は変わりますが、その残数がなくなるまで借金は可能です。)

4.手番の行動まとめ
 では、手番の行動をまとめてみます。
 ①:株の配当(必須)
 山札からカードを1枚引き、引かれた株と同一の株を所持しているプレイヤーは勝利点を1枚につき1点獲得します。
 ②:競り(任意)
 引かれた株に対する行動の権利(購入か所持株の売却)が競りに掛けられます。競りに参加するプレイヤーは自分の手番にチップを1枚出します(参加しないことも可能です)。途中で降りたプレイヤーは場に出ているチップを回収します。競りが終わったときに2番目に競っていたプレイヤーは、1番目のプレイヤーが選択しなかった権利を行使することが出来ます。
 ③:株の購入・所持株の売却(任意)
 購入を選択する場合、競りに掛けられていた株を所持株に加えます。所持株の売却を選択する場合、競りに掛けられた株の内枠と同じ色の所持株を売却することが出来ます。売却の時の価格は、場に出ている売却しようとしている株と同一の株の枚数です。購入を選択したプレイヤーが次の競りのスタートプレイヤーになります。

5.ルール難度:少し簡単(基本は株の購入と売却だけ)
 売却のタイミングなど考えどころは難しいですが、ルールそのものは難しくありません。山札から引かれた株を見てチップを出すか出さないか決め、競り落とせば購入するか売却するか決めるだけです。株の売却価格は場に出ている同じ株が何枚あるか、株の配当は引かれた株と同じ株を何枚持っているか数えるだけで分かります。
 
6.個人的評価:7点(10点満点)
 私は面白いボードゲームだと思いますが、一緒にプレイした両親からの評価は余り芳しくありませんでした。そのことについては後で述べるとして、まずは『ムガル』の魅力を述べたいと思います。
 『ムガル』の1番の魅力は、如何に株を購入して如何に売り抜けるかを考えるところだと思います。チップがなければ株は購入出来ません。チップを集めるには競りに参加し、且つ場にチップが貯まっている状態で降りなければなりません。もし、自分の前に降りられてしまったら場にはチップが無くなり、すぐに降りるに降りられなくなり、その後上位2人に残ることが出来なければチップの出し損になってしまいます。売る株が無ければ2位でも意味がありません。そうした無駄な支出を抑えつつ必要な株のためにチップを上手く回収し、狙った株を購入して上手く売り抜ける、これが予定通り行ったときがとてもスカッとします。
 株を売却するためには、今まで自分が集めてきた株とは違う、内枠の色が同じ株を競り落とさなければなりませんが、これが単純に同じ株だけを集めていれば済むという単純なゲームにならない、深みのあるゲーム性に繋がっていると思います。その株を売却したいプレイヤーだけでなくその株を購入したいプレイヤー、そしてそのどちらかを邪魔したいプレイヤーとも競り合わなければならなくなる、複数の思惑が絡んだ競りが起こりやすくなっているからです。
 場に同色の株が貯まっていなければ株価が高騰しませんが、機を伺いすぎると思わぬタイミングで売却されて下落することもありますし、暗黒の木曜日が近いと思い皆がチップを出し続けて高くついてしまうこともあります。だからといって早めに売却してしまうと株の配当が入ってこなくなってしまう、少ない要素の中に様々なジレンマが仕込まれています。
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(同じ株が購入されていくとその株価が段々と高騰していく、誰かが売却すると下落してしまう、現実の株取引のような流れを味わえるのも魅力の1つです。)
 
 それでは次に、両親に指摘されたものも含めて、私が考える『ムガル』の難点を述べたいと思います。
 1つめの難点としては、展開が少し地味ということが挙げられます。これは特に初めてプレイしたときに強く感じました。淡々とカードを引き、淡々とチップを置いて競りをしていくということを起伏なく続けていくようで、「あれ、これは買って失敗したかな」と途中で思ってしまいました。競りゲームを初めてプレイしたということもあり、勝手がよく分からなかったのです。ただ、1回通してやれば、淡々としたゲームの中にもちゃんと盛り上がりどころがあることや、どうプレイすればいいかが大体分かったので、2回目は「次はあの株を集めて売り抜けよう」といったある程度の方針を持ってプレイすることが出来ました(2回目が終わっても私の両親の場合、買うのは分かるがどのタイミングで売ればいいのかタイミングが掴めないと言っていたので、人によっては3回以上しないと勝手が掴めないかもしれません)。
 2つめの難点としては、カードの視認性が若干悪いということが挙げられます。これは一緒にプレイした両親から強く主張されたことなのですが、株の売却を示すカードの枠の色、特に白と灰色が判別しにくいそうです。確かに白株の売却を示す枠は白より灰色に、灰色株の売却を示す枠は灰色より黒に近く見えます。日本語版作成に当たり、株の色を色覚異常に対応するよう変更して、ピンクと緑が白と灰色になったみたいなのですが、枠の外側の色のことを考えて白以外の色にしてもらえていたらと感じました。
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(カードの外枠が白のため、白の内枠を完全な白に出来なかったのだと思います。

 3つめの難点としては、値段が少し高めということが挙げられます。ボードは付属していますが基本はカードゲームであり、ボードと駒を使うことで紙に一々点数を記録するよりもプレイアビリティが向上していることは理解できますが、他のカードゲームの定価が大体2000円以下ということを考えると、プレイ感の割には少々高いと感じてしまいます(2版の樹脂製チップではなく、初版の金属製チップが付属しているのであればこの値段で妥当と思います)。
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(毎ターン可能性のある配当の確認には、確かにボードと駒があると便利です。

 4つめの難点としては、これは難点と言うほどの物でもないのですが、競りから降りたときに場に出ている全てのチップを回収出来るというルールが、株取引としてはなんだかしっくりこないということが挙げられます。ゲームのルールだからと言われてしまえばそれまでなのですが、どうして降りた人が自分の出したチップを回収するだけでなく、場に出ている全てのチップを回収して降りることが出来るのか、これが何を表しているのか上手くイメージすることが出来ませんでした(私が理解出来ていないだけで、株取引の何かを表現しているのかもしれませんし、そんなことを言い出したらどうして競り勝たないと所持株が売れないんだとか、『ムガル』が株取引を再現しているゲームと考えれば突っ込みどころは他にもあるのですが)。
 以上4つの難点を挙げさせていただきましたが、地味に感じた展開も慣れれば起伏を見出すことが出来ますし、色もこれは灰色に見えるけど白、これは黒に見えるけど灰色なんだと受け入れれば済む話です。値段は購入した以上仕方ありませんし、回収ルールも『ムガル』は株取引を再現したゲームではなく、株取引っぽい雰囲気を味わえるゲームなんだと考えればいいと思います。ゲーム性自体に特に不満はありません。
 競りゲームを初めてしたので、これが競りゲームの傑作かは他のをしてみないと断言出来ませんが、十分面白いゲームだと思います。面白みが分かりにくい人がいるなど少々難点がありますが、買って良かったゲームだとは思いますし、今後プレイを重ね、両親にも『ムガル』の面白さをもっと感じてもらえたらなと思います。

 さて、これで第2回のレビューを終わりたいと思います。2回目なので1回目より早く書けるかなと思っていたのですが、凝り性なせいで、ここの文章はどうしようなど色々考えてしまい、1回目よりも完成に時間がかかってしまいました。この感じだとレビューは1ヶ月に1つぐらいしか挙げられなさそうですが、気長に待っていただけたらと思います。







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