No.8 宝石の煌き(Splendor)
宝石の煌き 1
はじめに


 私が良いなと思うゲームにはいくつか共通の要素があります。勝ち筋が1つじゃないこと、お互いの動向がゲームに影響を与えること、適度な運要素があること、マンネリ感がなく何度でもプレイを楽しめること、終了が間延びしないことなどです。これらの要素を全て備えてくれているのが今回レビューする『宝石の煌き』になります。

このボードゲームのデータ(クリックすると開きます)
タイトル 独:Splendor
米:Splendor
日:宝石の煌き
デザイナー Marc André
(マーク・アンドレ)
アートワーカー Pascal Quidault
(パスカル・キノート)
メーカー Space Cowboys
(スペースカウボーイ, 仏)
日本語版発売元 ホビージャパン
発売年 原版:2014年
日本語版:2015年
プレイ人数 2~4人
2人ルール トークン、タイル数が変更
公称プレイ時間 30分
対象年齢 10歳以上
定価 原版:30ユーロ
日本語版:5000円
購入価格 2157円(送料別)
2019年11月、米Amazonにて
言語依存 なし
相互干渉
(インタラクション)
あり(トークン・カードの獲得、予約)
非公開情報 予約したカードの内容
ルールブック 3ページ
ルール難度 少し簡単
受賞歴 2014年独年間大賞ノミネート
2014年ゴールデンギークボードゲームオブザイヤー受賞
2014年日本ボードゲーム大賞受賞
他受賞歴多数
個人的評価 8点(10点満点)


1.ルール概要

 『宝石の煌き』を端的に説明すると、お買い物をするゲームです。宝石トークン(お金のようなもの)でカードを購入していき、勝利点を獲得することがゲームの目的です。
 下の写真はゲームを始めるためのセッティングが済んだ状態ですが、1番手前に並んでいる丸いチップが宝石トークン、その上3段に並んでいるのが購入していくカードで、上の段ほどカードの価格が高くなっています(1番上のタイルについては後述します)。
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ルール詳細(クリックすると開きます)
 カードの購入価格はカードの左下に記載があり、下のカードの場合、白いトークン6つが購入のために必要だということが示されています。
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 カードの左上に書かれているのは勝利点です(上のカードの「3」の部分)。15点を目標に名声を集めていき、誰かが15点集めたら、全員の手番数が同じになるようにプレイを行い、その後で1番点数が高い人がこのゲームに勝利します。15点最初に取った人が勝つわけではありません。
 購入出来るカードの中には、勝利点がない、つまり勝利点の場所に何も数字が書かれていないカードもあります。これらはいくら買っても勝利点の足しになりません。
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 じゃあこういったカードが何になるのかというと、これらは購入の際の割引券として使うことが出来ます。カードの右上に書かれているのが割引になる宝石です(上のカードの茶色の宝石が描かれている部分)。例えば上のカードを購入していれば、次に下のカードを買うときに、茶色の宝石を1個分支払わずに購入出来るということです。
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 そして、割引券は1回使ってもなくならず、何度でも使うことが可能です。だから、2枚買えば2個分、3枚買えば3個分の割引として使うことが出来るようになります。つまり、茶色の割引券を3枚購入していれば、茶色のトークンを1つも支払わずに上のカードを購入出来るということです。割引は累積していくのです。
 トークンの持てる数は10枚までに制限されているので、10枚以上のトークンを要求する高価なカードは、必然的に割引券を利用して買うことになります。じゃあこのトークンをどうやって手に入れるのかですが、トークンは1手番を使って同じ色を2枚か、異なる色を1枚ずつ合計3枚取ることが出来ます。なお、同色を2枚取るときは、トークンの山の残りが2枚以上残るようにするという制限があるので、取ろうとしたときに最低でも4枚残っていなければ2枚取りすることは出来ません。
 このトークンを取るという行動をするときに取れるのは緑、茶色、赤、青、白の5色だけです。下の写真の右端にある黄色のトークンを取ることは出来ません。
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 これは何色としても扱えるジョーカーのようなもので、普通に取ることは出来ません。自分の手番に出来る行動はトークンを取る、カードを購入する、そしてまだ説明していないカードを予約するという3つなのですが、その予約の行動をするときにこの黄色のトークンを取ることが出来ます。
 カードの予約とは、欲しいカードがあっても手持ちが足りない時などに、そのカードを自分の手元に取り敢えず確保する行動で、中身の見えていない、山札の1番上のカードを予約することも可能です。予約しただけではそのカードの名声点を得ることは出来ませんし、割引券として使うことも出来ません。改めて別の手番に必要なトークンを支払うことで、割引券などとして使うことが出来るようになります。普通に購入するのと比べると1手番損しているわけですが、その代わり、カードを予約したときに黄色トークンを1枚獲得することが出来ます。黄色トークンが無いときも予約だけは可能です。なお、予約して1度に所持出来るカードは3枚までで、3枚予約したらそのどれかを購入しない限り新たな予約をすることは出来ません。
 では最後に、セッティング写真の1番上に並んでいたタイルについて説明します。
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 これは貴族タイルというもので、カードと違い直接購入することは出来ません(手番の行動に、タイルを獲得するというアクションは存在しません)。タイルの左下に書かれている枚数分カードを購入すると、即座に獲得するようになっています。
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 この「即座にというのは、手番の行動権を使わずに、カードを購入して必要枚数がそろったその時点で自動的に獲得されるということです。タイル毎にカードの必要枚数や種類は異なりますが、全て勝利点3点の価値があります。


2.手番の行動まとめ

 〇トークンの獲得、カードの購入、カードの予約のいずれか1つ(必須)
 毎手番3つの行動から1つを選択して行動していきます。
 トークンを獲得する場合、異なる色を計3枚か同じ色を2枚(ストックが4枚以上の時)獲得します(獲得によって所持トークンが10枚を超えたら、超えた分だけ手持ちのトークンを山に戻し、手持ちを10枚に収めます)。
 カードを購入する場合、価格分のトークンをストックに戻し対象のカードを獲得します(割引券を所持していれば、割引分は支払いません)。
 カードを予約する場合、表側のカードか山札の1番上のカードの中から1枚を選んで確保します(1度に持てるのは3枚まで)。

 手番が来る度に1つの行動をするだけですし、その行動自体も複雑な要素は含んでいないので、ゲーム慣れしていない大人でも1回プレイすれば大体の感じを掴めると思います。4歳の甥っ子でも支障なくプレイ出来るぐらいです。難易度は少し簡単といったところです。

3.プレイ人数による違い

 人数によりルールの根幹が変わることはありません。変わるのはトークンのストック数などだけです。下の表を参照して下さい。(黄色トークンはどのプレイ人数でも5枚固定)。
プレイ人数 トークン 貴族タイル
2 4 3
3 5 4
4 7 5
 3人と4人でプレイしてみましたが、特にプレイ感は変わりませんでした。2人ではまだ出来ていませんが、トークンの山が4つだけになるので、同色2枚取りをするのが中々難しそうです。
 ちなみに、プレイ人数は2~4人となっていますが、持ち駒というものが存在しないので、やろうと思えば5人でも6人でもプレイすることは出来ます。ただ、トークンが足りなくなるでしょうし、貴族タイルの入手も難しくなるでしょうから、やはり4人までが丁度良いと思います。

4.個人的評価:8(10点満点)

 「はじめに」で述べたように、私が良いなと思う要素の多く『宝石の煌き』は備えてくれています。
 第1に、戦略の多様性です。勝つためには勝利点のあるカードを購入するか貴族タイルを集める必要があります。どちらで勝利を目指すにしろ、カード、タイルによってそれぞれ要求されるものが異なっているので、どこを目指すかで各人の動き方が変わってきます。例えば、タイルの勝利点で勝とうと思っても、赤と緑のカードを要求するタイルを目指すのと、青と白のカードを要求するタイルを目指すのとでは、購入を狙うカードが全く異なったものになっていくわけです。これが戦略の多様性を生むことになります。
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 ちなみに私は、カードよりもタイルで勝利を目指すのが好きなので、全ての貴族タイルに必要なカードを確認し、一番関わっているのが多いカードから集めていくのを基本戦術にしています。安いカードだけ購入して必要な枚数を揃えるのが一番効率的ですが、このゲームにはルール上捨て札が存在しないため、山札のカードが全て買われてしまうとその段のカードが枯渇してしまいます。そのため、同じ種類を狙う競合者が複数いると、安いカードだけでは必要な枚数を揃えることが出来ません。これも安いカードを買い続けるという単一の戦略をし続けられない、全体の一部だけでゲームが収束してしまわない良い仕組みだと思います。
 そして、他のプレイヤーと方針が被っていて、相手の方が早いな、分が悪そうだなと感じたら、途中で方針転換することが必要になったりするわけですが、このお互いの動向がゲームに影響を与える、適度なインタラクションがあるというのもまた良いものです。相手の動きを見て、状況に応じて動き方を変えないといけない。つまり、勝利への道筋は1つではなく、いくつにも分岐していくのです。何だかわくわくしませんか。
 第2に、適度に運の要素があります。運要素が一切ないと、ゲーム性にも依りますが、大体は将棋みたいに頭が重たくなるゲームになってしまいます(将棋は下手だけど好きですよ)。逆に運要素が強めだと、結局は運のゲームかとなる。このゲームの運要素は山札からのめくり運だけで、その運要素も自分のプレイングである程度は抑制することが出来ます。ある程度はコントロール出来るけど完全には掌握しきれない、個人的には良い塩梅の運要素だと感じています。
 第3に、マンネリを余り感じず何度も楽しんでプレイすることが出来ます。同じ配置、同じマップのゲームを繰り返していると段々既視感が出てきますが、『宝石の煌き』はタイル、カードの初期配置がゲーム毎に変化します。そのため、タイル狙いを毎回行ったとしても、ゲーム毎に違う道筋を考えなければならず、同じことを繰り返しているという感じになりません。『カタン』のランダムマップのようなものです。
 第4に、終了がそこまで間延びしません
得点の増減があるゲームだと、取った取られたが生じ、まあそれが楽しくもあるのですが、ゲームが間延びすることに繋がります。また、『カタン』のように資源の獲得がダイス運に依ると、運が悪いと中々資源が集まらず、無為に時間を過ごすことになってしまいます。これらに対し、『宝石の煌き』は減点要素が無く、トークンを運に寄らず確実に手に入れることが出来るため、何もすることがないということが起こりえず、長短はあれど、必ずゲームが終了するようになっています。何もすることがないということが起こらない、必ず何か出来ることがあるというのも実に良い点だと思います。プレイする人の長考具合にも依りますが、4人プレイでも1時間以内には終わるのではないでしょうか。
 終盤は
割引券が集まってきて、最初は手の届かなかった高価なカードも割安で買えるようになってくるのですが、15点というのが遠いようで意外とあっさりやってくるので、「え、もう終わりなの。早くない」「あと1手番あれば勝てるのに」ということがよくあります。することがなくなった、しようとしたことを大体してしまったのにゲームが終わらない、となると、間延びやぐだぐだを感じやすくなるので、まだやりたいことがあるのにやりきれずに終わってしまう、早いと感じさせるというのも実に良い点です。次はもっと上手くやろうとリプレイ欲を高めることにも繋がります。個人的には『アグリコラ』も同じようなゲーム感です。あれは長時間ゲームですが、しなければならないことがたくさんあるのにもう終わってしまうという思いによく駆られます(私が下手なだけかも知れませんが)。
 第5に、ルールがそこまで難しくありません。私の4歳の甥っ子でもプレイ出来るぐらい簡単です。それでいて、ただ単純なゲームというわけではなく、しっかりと頭を使わせてくれます。そして、原則はこうだけどこの場合には出来ないというような、ルールの細則、例外規定がほとんどないです。トークンを2枚取りするときの制限くらいなので、こういう場合どうなるのとならずに気軽にプレイすることが出来ます。
 以上述べてきたように本当に色々な良いところがこのゲームにはあるのですが、難点がないわけではありません。第1に、後手番が不利ではないかということです。これは私の弟に指摘されたのですけど、初期配置のカードに欲しいものがあっても、それを複数のプレイヤーが狙った場合、先手番が先に必要トークンを集め終わってしまうので、後手番は予約で妨害するしかないと言うのです。まあ、
先に動いた方が先に行動し終わるわけですから、それはその通りです。ただ、後手は後手で、先手の動きを見て他の路線に変更したり出来るので、追いつけないのであれは、違う路線に変更すれば良いだけだと私は思います。1番有利そうな道に進めないことにはなりますが、山札からのめくり運によっては、第2,第3の道の方が早く進めるということも十分あり得るのです。
 それに、後手番には後手番の有利なルールがあります。それは、誰かが15点に到達した場合、その現在のラウンドで、全員の手番が同一になるようにプレイしてゲームが終了するというルールです。これはつまり、先手番が15点に到達しても、後手番がそれを捲るチャンスがあるということですし、反対に、後手番が15点に到達したら、先手番にそれを捲るチャンスはないということです。もし、最後手番のプレイヤーが15点に到達したとすれば、その時点でゲームが終了し、誰にも逆転のチャンスはないのです。これはとても有利な点ではないでしょうか。この同一手番数を行ってゲーム終了というルールは色々なゲームに採用されていますが、先手有利を是正するものとして機能しているんだなと今回改めて感じました。
 第2に、テーマ性、物語性が少し薄いということです。公式の設定によると、プレイヤーはルネッサンス時代のギルドを率いる商人で、プレイヤーの目的は名声です。カードは鉱山、船、職人などを示しており、カードを購入することはそれらを開発し、それにより今後の購入コストを削減することを意味しています。
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 しかし、設定としては存在していますけど、その設定をプレイ中に感じることは個人的に余りありません。例え生産地から販売店まで全て揃えたとしても、特に意味がないからです(1枚1枚に勝利点や割引券としての意味はありますけど)。
テーマとゲーム性が合っているゲーム、それをしていると感じられるゲームの方が私は好きなので、そこが少し残念かなと思います(カードの1段目は鉱山、2段目は輸送手段または職人、そして3段目は販売店が描かれていて、1段目(原石)より3段目(カッティング済)の方がカード価格が高くなっているのは、絵柄にそういう意味があったのか、面白いなあと思いましたが)。
 というわけで、良いところはたくさんあるのですけど、テーマ性の薄さが気になるので、評価は8点にしたいと思います。ゲームとしては問題なく面白いので、それとは別にそういうことを求めるかどうか、そこに重点を置いているかどうかは本当に人によると思いますけど、あくまで私個人の主観による点数ということですので、このぐらいかなと思います。

5.『宝石の煌き』の入手方法(2020年4月時点)

 日本Amazon、楽天市場では日本語版が高騰し20000円前後になっていますが、並行輸入品などの海外版(日本語説明書なし)なら5500円前後で購入することが出来ます。駿河屋では以前セールの対象になっていましたが、現在は中古を含めて取り扱いがありません。他のボードゲーム専門店の通販サイトものぞいてみましたが、どこも在庫なしという状況でした。メジャーなゲームではありますが、意外と入手が難しそうです(人気作品なので、しばらくすればまた出回るようになるとは思いますが)。
 海外から個人輸入する場合、私が購入した時点では独より米Amazonの方が安価でした。ですが、現在は独、米Amazon共に30ユーロ前後の価格となっているので、その価格+輸送費を支払うぐらいなら、国内で購入したほうがいいと思います(そもそも新型コロナの影響で、現在は米独Amazon共に日本への輸送を受け付けていませんけど)。
 言語依存についてですが、文字はなく、全てがイラストと数字で表現されているので、説明書以外に言語の心配はありません。そのため、無理してプレミア価格の日本語版を購入する必要はないと思います。説明書がないとプレイ出来ないようなゲームではないので、説明書が付属していない中古品を買っても特に心配ありませんが、メーカー公式HPに原語版説明書がPDF公開されていますので、説明書の内容が気になる方はそちらを参照されればと思います。

おわりに
 
 1年前の4月15日に最初のレビューを書きました。それから8個目のレビューということで、目標にしていた1月に1個を達成出来てはいないのですけど、徐々に書き慣れては来たかなと感じています。書きたいボードゲームはたくさんあるのですけど、レビュー記事って中々にエネルギーを使うので、そう気軽に書けないんですよね。ブログ1周年を記念して、今までに購入したボードゲームの一覧もExcelで表にしていたのですけど(需要があるかは別にして)、そちらもまだまとまっていませんし、書きたいことがたくさんあるというのも大変なものです。取り敢えず、レビュー記事は書式を模索中で、書く度に変わっているので、それだけでもこれだという形を早く見つけられたらなと思います。それと、ブログでボードゲームのレビューを書く人間として、どうしてその評価になるのか、出来るだけ客観的な指標ではっきりと言語化出来るように、もっと研鑽を積んでいきたいなとも思います。