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はじめに


 『フォボスのほしめぐり』はフランスのゲーム絵本です。すごろくやが日本語化して販売しているゲーム絵本シリーズの第2弾に当たります。第1弾は『ドラゴンをさがしに』です。
 最初このすごろくやのTweetを見た時、私が思ったのは「ゲーム絵本って何?」「すごろくやがどうして絵本を売るの?」ということでした。すごろくやが販売するんだから絵本と言っているけど実はボードゲームなんだろうか、と思い調べてみましたが、基本的には普通の絵本のようでした。興味はありましたが、面白いのかよく分かりませんでしたし、そこそこの価格がしたので、結局買わずにいました。
 ですが、甥っ子の誕生日プレゼントに適当か確かめたくなり、安く買えるのを見つけたのもあって、思い切って購入してみることにしました。
 具体的にどういう絵本なのか、どこにゲームらしさがあるのか、そして面白いのかということを、極力ネタバレにならないように、かいつまんで紹介していきたいと思います。


この作品のデータ(クリックすると開きます)
タイトル 独:ODYSSEE DE PHOBO
仏:L'Odyssée du Phobos
日:フォボスのほしめぐり
デザイナー Roméo Hennion
(ロメオ・エーニョ)
アートワーカー Arnaud Boutle
(アルノー・ブトル)
メーカー Game Flow
(ゲームフロウ, 仏)
日本語版発売元 すごろくや
発売年 原版:2019年9月27日
日本語版:2020年11月12日
プレイ人数 1人
公称プレイ時間 約15分
対象年齢 4歳~大人
定価 原版:17.90€
日本語版:2640円
購入価格 1548円(送料200円含)
2021年2月、軽井沢Viitta あそび堂にて
ルールブック 2ページ
受賞歴 なし
個人的評価 8点(10点満点)

1.絵本概要

 『フォボスのほしめぐり』、タイトルだけ聞くと「フォボス」が人のように感じますが、これは宇宙船の名前です。
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 「フォボス」という宇宙船に乗って科学者の「トビー」、機械整備士の「グローブ」、操縦士の「エクリプス」の3人が、ロボット族のビーボを助けに行くというお話です。3人の中から主人公を選び、そのキャラクター視点で物語が展開していきます。
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(右の赤いディスクを回して、主人公を誰にするか選びます。)

ルール詳細(クリックすると開きます)
 本の構成としては、出発の準備、ビーボの救出、修理パーツの探索など全7章です。各章の始まりに導入の文章があり、それを受けて3つの選択肢から進みたい物語を選びます。
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 第1章だけ紹介すると、出発の準備としてエネルギーを生み出すリアクターを貰いにいくか、フォボスの状態を確認するか、レーダーを借りに行くかを選びます。
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 そして、選んだ選択肢の頁をめくると2つの選択肢が現れます。これは自由にどちらかを選べるものもあれば、選んだ主人公によってどちらを選ぶか決まっているものもあります。
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 この選択が正しければアイテムが入手出来、入手したアイテムは四辺のディスクで管理します。
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 後半になると、前半のアイテムを持っていないと選択出来ない選択肢も出てきます。
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 エンディングは3種類あり(グッド、ノーマル、バッド)、全て正しい選択肢を選ぶことが出来ているとグッドエンドを迎えることが出来ます。

2.プレイ風景


 2021年2月7日(日)、自宅にて弟と甥っ子と私の3人で読みました。
 最初は甥っ子1人で読めるかなと思ったのですが、本の説明のページが意外と字が多く、少し読んで読むのを止めてしまったので、弟と私が読み聞かせながら選択肢だけを甥っ子に選んで貰いました。最初は余り興味がなさそうでしたが、選択肢を自分で選ぶ、それで結果が変わるというのが面白かったみたいで、途中からは本から目を離さず聞いていました。1回目のプレイではバッドエンドでしたけど、「どうすれば正解だったのかなあ」と言いながら、すぐにもう1度始めました。
 2回目は「グローブ」から「トビー」にキャラクターを変更し、1回目とは全て違う選択肢にしていました。結果いくつかアイテムを手に入れることが出来、今度はノーマルエンドを迎えることが出来ました。そしてすぐに3回目。今度はキャラクターは変えずに選択肢だけを変えてやってみたのですが、アイテムを全く入手することが出来ず再びバッドエンド。3回もやっていると、選択肢の先で何かアイテムを貰えないといけないと分かっているので、貰えずに次のページに進むことになると「ああ-」という顔をしていました。
 ここで私はちょっと用事があり読み聞かせを止めたのですが、甥っ子はその後も1人で何度も何度も読んでいました。「ああ-、また駄目だった」「今度はパーツを取れたよ」など、その都度様子を伝えてくれます。8回目ぐらい読んだ頃でしょうか、「全部出来たよ!」「ロボットが直った!」と言いに来ました。見事グッドエンドを迎えることが出来たようです。「どうやって出来たの?」と聞くと「ええと、最初にね、これを選んで、そしたらこれが貰えるから・・・」と最初からどうやってクリアしていけたかも話してくれました。こうしてクリアは出来たわけですが、その後も夢中になってパラパラとページをめくって楽しんでいるようでした(テレビでアニメが始まるとそっちに興味が移ってしまいましたけど)。


3.個人的評価:8(10点満点)

 買って良かったなと思える絵本でした。最初の説明ページを開いた時、そこそこ小さい字で結構びっしり文字が書いてあったので、これを甥っ子が1人で読むのは無理じゃないかな、読めるのは小学生からかなと感じたのですが、本文は絵の配分が多く、文字の大きさも少し大きめになっていたので読みやすかったです。
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(最初のここだけ見て、うわー難しそうだなと思う人は結構いる気がします。)

 1回読み聞かせするなどして絵本の仕組みになれてしまいさえすれば、幼稚園児でも十分1人で読むことが出来ると思います。書いてある字も漢字は一切なく、全て平仮名と片仮名で書かれているので安心です。本の材質も良いですね。紙ではなく全頁プラスチックのような材質なので破れる心配がありません。こういう仕掛け絵本的なもので一番心配なのが本が破れてしまわないか、痛まないかということですが、その心配がないというのは大きいです。
 四辺のディスクで現在持っているアイテムとキャラクターを管理するのですが、このシステムも実に便利です。アイテムの獲得を一々メモするのは面倒ですし、本とは別の小物を使ってアイテムを管理するとそれを紛失する危険がありますが、全てのアイテムが本1冊の中に完結しているので、面倒でなく、紛失して遊べなくなるという心配もありません

 それと、文章がとても読みやすく感じました。私は元図書館職員で、現在は絵本の読み聞かせボランティアをしているのですが、絵本の中には文章がしっくりこないというか、何だか読み聞かせづらいなあと感じる絵本がたまにあります。そういう絵本は何度も練習するなどして読めるようにするのですけど、この『フォボスのほしめぐり』は初めて読んだ時から非常に読みやすく、ごくごく自然に読むことが出来ました。何と言ったら良いのか分かりませんけど、文章が良いんですよね。読んでいてとても気持ちが良い。こういう形状の絵本を使うのは少し難しいのですけど、読み聞かせ会で使いたいなとすら思いました。
 良いところがたくさんあるので褒めてばっかりですが、悪いところはないかというと、正直余りありません。大人や大きい子供だとお話の内容的に子供っぽいと感じてしまうかも知れない宇宙に興味がない子には余り刺さらないかも知れないということぐらいです。ただ、少し大きめの子でも、『だいぼうけんにでかけよう』シリーズはドラゴン、宇宙、深海と、どれもが聞いただけで胸が高鳴るようなわくわくする題材なので、そういったものが好きな子なら問題なく楽しめるんじゃないかなと思います。お話の内容も、幼稚園から小学校中学年ぐらいの子供にならバッチリです。
 悪い点ではなく、読む上で注意したい点は、子供は間違った選択肢を選んでしまうと「じゃあ、こっちだったのかな」と言って、すぐに他の選択肢の答えを見てしまおうとするところでしょうか。何回も読んだ後ならともかく、最初からそれをしてしまうとこの本の魅力半減です。1人で読ませるとしても、答えをのぞき見しようとしたら「戻って見ないで、そのまま最後まで読んでみたら」と声をかけていきたいものです(甥っ子も1回目はすぐに答えをのぞき見ようとしていたので止めました。2回目からはしませんでしたが、1人で読んでいる時はちょっと覗いたりしていたみたいです)。

4.『フォボスのほしめぐり』の入手方法(2021年2月時点)

 日本Amazon、楽天市場では、新品がほぼ定価で販売されています(送料は購入ショップによる)。現在の所、駿河屋では取り扱いがないようです。


 海外から個人輸入することも可能ですが、日本語版が安価で手に入りますし、言語依存の塊なので、特に理由がない限りは国内で日本語版を購入するのがお勧めです。
 私は2021年2月に、Yahoo!ショッピングの軽井沢Viitta あそび堂にて、新品を1548円で購入しました。定価で販売されていたのですが、Yahoo!ショッピングの日替わり30%OFFクーポン(-792円)とYahoo!プレミアム会員特典(-500円)を使用してこの価格で購入することが出来ました。
クーポン
 発送がクリックポスト対応で、送料が200円で済んだのも良かったです。早期購入特典のキーホルダーも
今ならまだ付属するようです。
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 すごろくや通信販売での配布は既に終了したそうなので、欲しい方はこちらのショップで購入されてみてはどうでしょうか。

おわりに

 図書館において、こういう特殊な仕掛けの絵本は子供たちにとても人気があるので、取り敢えず『だいぼうけんにでかけよう』シリーズ全て地元図書館に購入リクエストを出しておこうと思います。

 このシリーズは図書館にもメリットの多い作品です。図書館職員時代、紙製の仕掛け絵本はすぐに破れてしまい、修理の連続で大変でした。最終的に廃棄になるものも多く、最初から貸出不可、館内閲覧のみになっているものも多かったです。評価の所でも触れましたが、プラスチックのような材質で壊れない仕掛け絵本というのは図書館にとっても絶対にありがたいです。貸出も出来ますしね。
 こういうものを置いていくのをきっかけに、すごろくやの名前が図書館に売れ、ボードゲームの認知が全国の図書館職員に広がり、ボードゲームを図書館に資料として保管、貸出するという動きが加速しないかなと思います。